KSKV

Khong Say Khong Ve. ベトナムの意味なし画像集

ベトナムの住所 bis ter の意味と言葉の伝来と暦についてホーチミン市で考えた

f:id:zamad:20161005205218j:plain

ホーチミン市の住所では大体通りと番地で構成されていて、 その2つの情報で大体目的の住所には到達できる。

そのへんの話はこっち

zamad.hatenablog.com

しかしたまに番地にさらに「bis」や「ter」という文字が付加されている場合があり、これはなんなのかと調べてみた。

古い住所表記

bis や ter というのは、ラテン語圏で 2nd 3rd を意味するようで、番地のさらに枝番を示しているようなのだ。 しかし、全部が全部そうなのではなく、かなり古い住所表記のようだ。

ある大きな番地があって、それを分割した際にメインとなるやつはそのまま、余ったやつに順番に bis, ter, とつけていったようだ。 このへんはフランス文化の名残のようだ。

しかし新しい住所には A,B,C のように枝番にはアルファベットが用いられることが多い

ラテン語

それではラテン語で 1st, 2nd, 3rd とはどうなるのかを調べると

Latin number
semel 1
bis 2
ter 3
quater 4
quinquies 5
sexies 6
septies 7
octies 8
novies 9
decies 10

ところどころ英語の月名を感じさせる単語があり、しかもそれがズレているというなんかの紆余曲折感が興味深い。

なぜズレる

これをさらに調べる。 古代ローマでは1年を10ヶ月(約300日)ととらえていて、残りの60日ぐらいは冬眠期間みたいな感じで日付が必要なかったらしい。そして春っぽいと思ったらまた1月1日から始めるという。 だからとりあえず10ヶ月分だけしか月名が存在しなかったというわけ。かなり大雑把な閏月の挿入とも言える。

その名前が先にあって後に太陽暦的に正しくするためにそこに残り2ヶ月分(60日)をなんの考えもなしに足したためにズレたという話。

旧暦とテト

ベトナムと言えばテトである。ベトナムの旧正月のことを指す。ベトナムに住む日本人は「テト」と言うが実際には「テッ!」という感じで1音節しか無い。 これは「節」という漢字のベトナム語読みである。これは中国では「春節」と呼ばれるイベントで、それがベトナムの家族原理主義村社会において悪魔的に省略されて「テッ!(tet)」となっている。

なんでベトナムと言えばテトなのかというと、ベトナム在住の日本人の話題としてこの旧正月がベトナムで最長の連休だからである。長い場合は2週間ぐらいある。逆に言うとベトナムには休日がそれだけ少ないということである。

それで毎年話題になるのは今年の休みはいつか?ということだ。ベトナムは中国を嫌っているが文化的には完全にその嫌な中国と同様で、公式にはグレゴリオ暦を採用しているが、祝い事は旧暦を採用しているのである。なので毎年ズレてしまうのだ。

なので毎年何時何時?という話題になるのである。

zamad.hatenablog.com

太陰暦と太陽暦

太陰暦では月の満ち欠けの周期で1ヶ月という長さを決めている。これが1ヶ月を「月」と呼ぶ、太陽暦で1ヶ月が30日前後に設定されているのはこの太陰暦の名残である。

太陰暦も太陰暦で12ヶ月を1年と定めている。これは太陽暦の基準である1年という長さが大体太陰暦の月の12回分に大体相当したからである。 そもそも1日を規定しているのは太陽である。朝から朝までが1日の長さなのである。太陽の周期を基準に1日を考えそれを土台に月の周期を数え、それを太陽の周期に当てはめたのである。

このように一口に旧暦?太陰暦ね、といっても実は相互に関係して歴史的に決まった経緯がある。

太陽暦では日と年が厳密である。しかし月に関しては天文学的にはなんの理由もなく大体月の周期ぐらいの長さで365日を適当に分割しているということなのだ。 天文学的に2月だけ満ち欠けが早いとかじゃない。

暦と季節感

旧暦では日と月は厳密なのだが、年がかなり適当になってしまう。なぜなら正確に月の満ち欠けを12回勘定すると 354 日になってしまうから。 11日足りないのである。しかし季節は巡る。3年経つと太陽の周期に対して33日遅れる、6年経つと66日、9年経つと、99日。10年ぐらいたってしまうと、月名と季節感がバラバラになってしまうのだ。 なので3年に1回1ヶ月追加することでこれを補正する閏月というものが導入されている。

ということで旧正月も毎年11日ずつ早くなって3年に1回大きく後ろにずれ込むという挙動になる。

こういうことになるので、旧暦使いにくいねっていう流れになって、そこに中国で「二十四節気」というものが導入されることになる。 これは太陽暦1年を24個の期間に分割したもので今でも祝日とかになごる「秋分」とか「夏至」とかいうやつである。 この分割は天文学的に正確に決められていていて、毎年のズレは無い。 このへんは季節感が重要な東アジア圏の文化な気がする。

逆に季節感がまったくないような中東を中心とするイスラム教では「ヒジュラ暦」というガチ太陰暦が使われてたりするのは面白い。 ヒジュラ暦では11日のズレを補正しないで354日を1年として考える。なのでドンドン季節がズレていくし、太陽暦ともズレていく。構わん!オレは独自でやるという考えがよい。 しかし実際は中東でも季節はあり農耕も行うので単なるオレオレ暦で使用者には不評のようだ。 1年を12ヶ月としている時点でガチのオレオレではなく片手落ちなので、ひねくれた中二的な思考のようで面白い。

なんとなく旧暦のほうが季節にあった風流な文化なんだろうなってぼんやり思ってたがあらためて考えてみると、太陽暦のほうが季節にがっちり合っていて風流なのでるのである。 祝日にしても太陽暦のほうが1年前との再現性は高い位置に太陽系として地球が存在していることになりより数字に意味が見出しやすい、旧暦だと実は毎年11日ずれてるし、3年に1回1ヶ月もズレてしまうのである。 それも自然とは無関係に。太陰暦のほうがより自然ではない感じなのである。

こういうのは面白い。今でも中華圏では文化的な節目では太陰暦が用いられることが多いが、それをほぼ排除した日本、その影には二十四節気文化がもうあったというのがデカイかもな。

はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

はじめて読む人のローマ史1200年(祥伝社新書)

古代ローマ人のくらし図鑑

古代ローマ人のくらし図鑑

古代ローマの女性たち (文庫クセジュ)

古代ローマの女性たち (文庫クセジュ)

面白いほどよくわかるローマ帝国―巨大帝国の栄光と衰亡の歴史 (学校で教えない教科書)

面白いほどよくわかるローマ帝国―巨大帝国の栄光と衰亡の歴史 (学校で教えない教科書)